夜明けのシュラバスティー
夜中2時半にゴンダ着予定だった列車は当然のように1時間遅れで到着。列車は途中で何度か止まるのだが、外には明かりなど何もないため真っ暗で、停車しても駅なのかどうかもわからない。
当然社内アナウンスなどなく、停車後しばらくすると、ドサドサ人が乗車してきて、外で物売りの声が聞こえてくるので、やっとそこが駅だとわかる。自分は車掌に「ゴンダで降ります。ゴンダで」としつこく言っておいたので起こしにきてくれた。
どのホームでどこ行きに乗り換えればいいのかさっぱりわからず、真夜中でもあったので結構不安になる。ゴンダ駅の案内所で「バランプールに行きたいんだけど」と尋ねると4時半の列車があるという。近くかと思っていたら、1時間程かかるそうである。10ルピーのチケットを買いとりあえずその列車に乗り込む。
今度の列車は向かい合わせの椅子席である。日本の車輌とは違い通路が端にあるため、椅子には4人ずつ座ることができる。座席の上に荷物置き場があったが、全席人が寝ていた。その長い木の椅子の端っこに座る。
この時間は早起きのジモティーしか乗らないようで、現地のみなさんからの熱い視線ビームを一身に浴びる。向かいに座っていた三人組にバランプールに行くというと、ああだこうだといろいろ言ってくるが、ヒンズー語のため全くわからず。ボディーランゲージで向かいの一人が「俺もバランプールで降りるからついて来い」と言っているらしかったので、一緒に降りる。既に日が登った線路沿いのあぜ道を歩き、タクシー乗り場まで案内してくれる。ありがとう。
朝早いためか、タクシーは1台しかおらず、他の交通手段もありそうにない。タクシーの運ちゃんとシュラバスティーまでの料金を尋ねると、「目的地までは18キロあるので、250ルピーだ」と強気の金額提示。交渉するも運ちゃん一歩も譲る気配なし。しかたなく乗る。かなり年期の入ったカーオーディオを「JBSだぜ」と自慢げに見せ、爆音でインドミュージックをかける。後部座席にスピーカーがあることなどおかまいなし。
ステキなインドの演歌を聞きながら、ひたすらまっすぐな一本道を突っ走る。しばらくすると、ピーピーと音がする。何かと思えば燃料メーターがエンプティーラインをはるかに切っている。エンジンの爆音と後のスピーカーからの爆音と、ピーピー音のサラウンド状態でさらにひた走ると、ガソリンスタンドが出現。運ちゃんは「今、金を払ってくれ」250ルピーを渡すと、10リッターきっかり入れていた。
耳障りなピーピー音も消えノリノリな運ちゃんは鼻歌まじりにスッ飛ばす。走っても、あたりは一面何もない原っぱだ。本当にここで合っているのかやや不安になる。
「へい、着いたぜ」と降りた場所は正にそれらしき寺院の立ち並ぶ場所。正門入口前でタクシーをおりる。今は公園なっており、ゲートの向かいにはスリランカの寺院があり、坊さんが立っていた。
「ニホンカラデスカ?」とカタコトの日本語で語りかけてくる。「そうです」と答えると「キョウハトマルデスカ?ココニトマッテイキナサイ」と寺院の中に案内してくれる。このあたりには韓国やタイなどの寺院があり、巡礼に来る僧のための宿泊施設を兼ねている。宿泊費は決まっている訳ではなく、その人の気持ち、いわゆるお布施である。