ジャハンギールの椅子

続いてアーグラ城へ。ムガル帝国のアクバル、ジャハンギール、シャージャハンと高校時代の世界史で習った王たちが住んだという城である。城の70%はインド軍関係の施設として使用されており、公開されているのは全体の30%らしい。が、王の間や、執務室、シャージャハンが幽閉された部屋などは公開されており、そこからタージマハルを眺めてみる。退屈だったろう。きっと。

かつてシャハンギールが座ったという椅子

ガイドのアシフが「ここ見たいデスか?」と連れて行ってくれたのが鍵のかかったドアの前。彼曰く、「ここは政府によって閉ざされていマース、とてもビューティフルな鏡の間というところデース。でもカギがかかってマース。」そりゃ見ればわかるっつーの。

「で、あそこに人がいマース」
確かに前歯のないニヤけたじじいが座っている。
「この人はここのカギを持ってマース」
おいおい何者なんだ。
「で、この人に50ルピー渡すとカギを開けてくれマース」
そういう事か。

まあ、折角だから見ていこうと思い鍵を開けてもらうことにする。他の観光客に見られないようにソローと入る。なんか悪いことしてるみたいだ。中は何かというと、かつて姫の風呂だった場所である。壁一面に鏡が散りばめてあり、蝋燭を灯すと綺麗に部屋が輝くしくみで、浴槽の周りでは音楽が奏でられ、ダンスなどが踊られていたという。かつては王以外の男は入れなかった女風呂に50ルピーで入ったワケである。ちなみにそのじじい、何だかナヨナヨして変だと思っていたが、そこを出る前にニヤーっとしながら俺のケツを触ってきた。あっちの人だったらしい。

風呂キーパーのホモじじい

続いてお約束タイム。今度はカーペット工場。宮殿の中でしきりにカーペットの模様の話をしていた、そういえば。70歳くらいのいい味出した職人が、ハタ織り機みたいなので手作業中。その正確無比な動きはまさにカーペットマシーン。

で店内に入る。どうも俺に説明をする兄ちゃんは全て販売スキルがハンパじゃない。今回のカーペット屋の兄ちゃんはかつて上野に一年住んでいたという、説明販売のセールスビデオとして売れるんじゃないかと思われる程のつわものである。日本の住宅事情を知り尽くした商品ラインナップも、こちらの断りに対しての切り替えしトークも完璧だ。思わず必要のないカーペットが必要な物のように思われて、買ってしまいそうになる。

が、既にこの時点で有り金のほぼ三分の二を使い果たし、財政難に陥っており、後8日間ある事を考えると大きな出費は痛い。ということで「欲しくない」の一点トークで切り抜ける。その時の兄ちゃんの寂しそうな顔はいつまでもインドの旅の記憶と共に俺の脳裏に刻まれることだろう。

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