ありがとうインドよ
映画も終わり、屋台でちょこちょこ買い食いしながらホテルに戻ろうと歩くと、またもや声をかけてくるインド人が。しかも、今度は日本語だ。おいおい、またか。「コンニチワ。ニホンカラデスカ?」といつものフレーズ。適当に対応しながら歩く。そのインド人は勝手に身の上話を語ってくる。
話によると、かつて芦屋で経営していたレストランが阪神大震災で崩壊してしまい、また日本でレストランを開くため、日夜努力しております。とのことであった。「あなたがあのお店に入ってくれるとワタシ100ルピーもらえマース。何も買わなくてもいいデース」
阪神大震災の被害者だということと、自分が店に入ると100ルピーもらえるという動機が明確であったため、「本当に何も買わんよ」という条件付で店に入る。が、店に入れば何も買わないというわけにはいかず、待ち構えていた店員達の「グッドクオリティー」「グッドプライス」攻撃にさらされるハメになる。しかも、ジキジキじじいに案内されたアートミュージアムで見たような繊細なタッチの絵があったりして、思わず欲しくなってしまう。が、金がないので何も買わず店を出る。
外ではさっきの日本語を話すインド人が待っており、「何も買わなかった」と伝えると「いえ、アナタが必要ないなら買わなくてもOKデース、買ってもらうとワタシにもコミッションが入ってくるコトになっているんデスけどね」「でも、アリガトウゴザイマス、いつかまた日本に戻りマス」とホテル近くまでバイクで乗っけてってくれる。日本はあなたを待っているからがんばってくれと別れる。
そろそろ空港へ行かねば。ホテルに戻り、相変わらず腰の低いマネージャーにチェックアウトの旨を告げる。ホテルの空港送迎サービスというのがあり、190ルピー。また、流しのドライバーと交渉するのも面倒だったので、それを頼むことにする。
しばらく待つとドライバーが迎えに来る。お客に対しては低姿勢のマネージャーは使用人のドライバーに対して別人のように強圧的になり、ヒンズー語で「何やっとんじゃい!とっとと準備せんかい!ゴルァ!」(※推測)そしてまたこちらに向かい、笑顔で「どうもありがとうございました~」と最後に凄まじい変貌ぶりを見せてくれた。
車は当然タクシーだと思っていたら、ポンコツの軽バンだった。しかも3名相乗り。なかなかおいしい商売だ。マネージャーに「とっとと乗せて、とっとと帰ってきやがれ」とでも言われたのか、カーチェイスばりのスピードでぶっ飛ばすドライバーの兄ちゃん。後部座席のドイツ人カップルもビビっている。
なぜか国内線よりも簡単なセキュリティーチェックを終え、飛行機に乗り込む。インディらガンジー空港を離陸したのは、日も暮れた17:45分だった。これからまた日本に戻り、忙しい日々が始まる。社会復帰できるだろうか、などと思いながら、窓から見えるデリーの街明かりを眺め、濃密なインドの旅を終えたのであった。
さようならインド、そしてありがとうインドよ。また来るぜ!
おわり